気がついたらずいぶん寒くなりましたねー。
今日ご紹介するのは今期Rhythmで充実しているミリタリー(軍物)ジャケット&アウターです。
オリジナルを研究し尽くした完全レプリカから、軽くて暖かく使い勝手良くデザインをモチーフにモデファイトされた物まで目白押し。
メーカーさんやそのアイテムそれぞれが目指す方向を理解する事により、スタイルのコーディネートや着る場面などに役に立ってくれると思います。
まずは当時のヴィンテージの完全レプリカ。
バズリクソンズから軍物の定番アウターN-1、通称デッキジャケット。
第二次世界大戦から朝鮮戦争にかけてアメリカ海軍の艦艇乗務員用として採用されていました。
風が強く天候の変わりやすい海の上に居る人のために設計されたアウターなので、暖かさは最強です。
表地は風を通しにくいジャングルクロスという高密度素材コットン生地、裏地は保温性のあるアルパカ混のウールパイルを全面に使用、袖口はニットリブでこちらも袖に風が入ってこないのでバイクを乗られる方なんかに人気があります。
色で年代と微妙なディテールの違いがあります。
カーキが1945年のN-1、ネイビーが1944年のN-1。
カーキの1945年の方が簡易的で、袖口の内側に付いたアルパカモヘア、インナーの脇の下と裾に付いたループが廃止されています。
コストの削減か使っていた人たちが不必要だったのかは店主はそこまで詳しくは分かりませんが、まあ必要ないだろうということで、翌年に無くなったんでしょうね。
次は中間的なアイテムのウィリアムギブソンコレクション。
当時のディテールを忠実に再現しつつ、ヴィンテージでは存在しないブラックカラーと現代的なシルエットに仕上げた面白いアプローチをしているL-2Bとモッズコート。
ウイリアムギブソンとはキアヌ・リーブス主演のSF映画「JM」の原作と脚本を書いたアメリカのベストセラーSF作家。
ヴィンテージの服やフライトジャケット、ミリタリーウオッチの収集家でもあり、元々ギブソン氏本人も実際にBUZZ製品の愛用者でもありました。
ウィリアムギブソンコレクションを発売するきっかけとなった話が面白くて、彼の新作『パターン・レコグニション』には、高価なBUZZの黒いMA-1を宝物として大切に着ている、ケイスという主人公が登場し、海外ではBUZZ RIKSON’Sの黒いMA-1への問い合わせが殺到したそうです。
その理由として氏の最新作にBUZZの黒いMA-1が何度も登場するからだという事が判明したそうで。
その後、ウィリアムギブソン氏とBUZZ RICKSON'Sが実際に会い、ウィリアムギブソンコレクション誕生したそうです。
ヴィンテージには存在しないジャケットですが、ブラックの生地にマットなウールリブニット、ファスナーテープ、ファスナ引き手についた革の質感や金属特有の冷たい光。
黒だからこそ騙せない、素材そのものが持つ質感が明確となり、生地、パーツが持つ良さが際立つアイテムになっています。
次はWORKERS"M-65 Mod,BLACK"。
M-65にしてはすっきりとした印象で、品名にもある通りまさにモデファイされています。
以下内容です。
素材は綿100バックサテンで、M-65というよりはM-51のそれで、より素材感の良さが出ています。
デザインされた作り手の舘野氏が個人的に苦手なエポレットは潔く無くしてます。
M65も初期型は元々ついていないそうです。
そして、ある意味M-65らしさの象徴でもある収納パーカーもなくしてます。
オリジナルはこの収納パーカーが背中側に落ちているのですがどうにもモコモコして気になる、また、現行で良くある襟のみに収める方法だと今度は立ち襟がかさばる。
そこで、思い切ってフードは無くしています。
その代りではありませんが、首にあたる肌部分はコーデュロイに。
また、襟を立てて固定できるようタブをつけています。
昨年、WeatherComfortJacketでもやっていましたが、襟にコーデュロイ、それを立てて固定すると寒いときにはマフラー替わりで実に便利。
実用性を考えた仕様です。
ウェストのドローコードも、最終部分が金属ハトメにせよ、ボタンホールにせよ実用すれば傷みやすい部分。
かつ、着ていると微妙に体に当たって気になるのでそれも無くしています。
ファスナーはYKK、ビンテージを模した「オールドアメリカン」シリーズ。
綿テープで引手をつけています。
スナップは露出に、また左腕部分にはiphone6が入るマチ付ポケット。
袖は太め、その分、袖口が絞れるようスナップをつけています。
まさにモデファイトなM-65ジャケット。
作り手が必要ないと思われるディテールやデザイン、こってりした所は大胆に無くし、襟のコーデュロイに代表される、もともと持っている良い部分を邪魔しないように追加する。
どちらが良くてどちらが悪いかではなく、2015年秋冬に今まで培ってきた作り手のスタイルが現れたM-65です。
次もWORKERSからN-3系のデザインを元にモデファイトされた中綿入りのアウター。
表生地にコットンリップストップ、裏地はナイロンリップ。
その間に3M/シンサレートを挟み込んだパフジャケット。
裏地に中綿をとめつけ、中綿が落ちることを防いでいます。
袖口にはコットンリブを入れて防寒性をアップ。
フードは脱着可能、フード付けスナップを襟にそのままではなく別布に。
フードが引っ張られても襟本体が引っ張られないので簡単にはフードが取れません。
スタンドカラーの肌側は毛足の長いコーデュロイ。
首回りの防寒性と肌触りの良さを考えています。
機能面でも、縦長のハンドウォーマー+腰のフラップと、ポケットはより実用性が高くなっています。
作り手の舘野氏が去年着てみて感じたのがシンサレートハイロフトの暖かさ。
ただ、使ったのが一番厚みのあるものだったのでかさばる。
そこで、今年は1ランク薄い物を使ってすっきりと。
これならば、中にシャツ+セーター程度着てちょうど良い厚み具合。
ファスナーはミリタリーウェアらしく、YKK製のオールドアメリカンの中でもワイヤー引手の物を。
そのままでは使い勝手が悪いのでテープを引手につけています。
38サイズで1200グラム程度。アウターにしては軽く、着ていて疲れにくいのが特徴です。
SALTWATER COWBOYの"REIBEN JACKET TYPE-M41"
1950年代頃のU.S. ARMY M-41フィールドジャケットを元に物語をデザインに乗せたジャケット。
実はこちら去年の2014年のジャケットで、今はCAL O LINEのデザイナーとして活躍をしている金子氏がデレクションをしていた最後のシーズンのアイテム。
14FW SALT WATER COWBOYのコンセプトの一つである「CHASING WEST」
読みかけのカリフォルニア史書籍をバックパックに詰め込み、故郷のSANTA CRUZを後にした若いバックパッカー。
彼が残した「ANOTHER WILD WEST」のメッセージとバナナスラッグの描かれたジャケットを便りに、彼の後を追いかけ、シェラネバダ山脈、ネバダ、アリゾナの地を旅する。
というもの。
そしてこのアイテムはカリフォルニアで旅をする若者がLAのVINTAGE SHOPで見つけたブルックリン出身の兵士のものと思われるジャケットをイメージしています。
金子氏のデザインの元になるアイテムは軍ものが多いのですが、数年前に実際に話した時に彼なりの哲学があって、軍物は本当によく考えられて作られた素晴らしいディテールがあるけど、戦争をイメージする物は作りたくないといっていました。
ヴェトナム反戦運動やヒッピーの当時の画像を見ると、カウンターカルチャーをしてあえて軍物シャツやジャケットを着用し、LOVE and Peaceのワッペンやバッジでリメイクし、平和の象徴として使われていた歴史もあります。
そういった目線で物作りをされているのが良く分かるジャケットです。
表地は耐水、撥水のVentile Cloth、身頃の裏地には薄いフリース。
ZIPはクラシックなディテールのUniversalを使用。
※M-41
第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が採用したフィールドジャケット。
シンプルなディテールで、デザインは民間のウインドブレーカーの影響を受けています。
特徴は腕の運動量を確保するため背中の両サイドに設けられたアクションプリーツ、防寒性と遮風性を高めるためジッパーとボタンのダブル仕立てになっています。
※Ventile Cloth
ベンタイルは、天然繊維「綿」から生まれた高機能素材。通常ブロードとして最高級ワイシャツ生地に利用される80番手という超極細の綿糸を、ブロードの160%もの糸量を使い、織機が織り上げることのできる密度の限界まで打ち込んでつくられる織物です。
英国空軍パイロット用の耐水服素材として開発され、日本でも防衛庁の海難救助服として利用されるなど、その機能性は折り紙付き。綿100%でありながらハードな使用に耐え、耐水圧700mm以上の防水性能(トラックの幌用綿帆布は500mm、綿の洋傘は250mm)と高度な撥水性能(洗濯前は水滴が付着しない100点の撥水性能、洗濯10回後も80%以上)、さらに、7000g/m2/24hの透湿性、0.5~2.0cc/cm2/secの通気性など、優れた機能性を持ちます。その上、直接肌に触れる生地面は、コーティングや合成繊維とは比較にならない爽やかな着心地を実感させてくれます。
次は今季の秋冬スタートしたその金子氏のブランドCAL O LINEからM-41を元にしたアウター。
今季は背面にプリントが控えめですが、メッセージは強烈です。
SF(SAN FRANCISCO),US(UNITED STATES)と手書き風プリント。
ビートが生まれた場所NY(ニューヨーク)ビートがアメリカ(US)を渡りヒッピーカルチャーをして花開いた場所、SF(サンフランシスコ)を表すプリントがされています。
有名なブランドだから、なんかカッコイイ、売れてて話題だからとか。
本当にそれで全然良いんです、それもスタイルですから。
ウチのスタイルは、作り手が込めた思いをしっかり受け止めた上で、お金を払って買っていただく方にお伝えする橋渡しがアイテムそのものが持つ価値の一部だとも思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今期アウターを考えている方の参考になればと思います。